映画”クワイエットルームにようこそ”を観ての感想。ハッピーエンドかバッドエンドか?(ネタバレあり)
初めて映画のレビューを書こうと思った経緯は、この映画が良かったのは勿論ですが一緒に観た人と解釈が大きく違っていたからです。
※ネタバレが有るので気をつけて下さい!
超ざっくり粗筋を説明すると、
バリバリ働いている主人公アスカがOD(過量服薬)して意識を失い目が覚めたら白い天井の病室で両手両足拘束されていた、それは精神科の閉鎖病棟だったのだ。そこからアスカの此処に至るまでの経緯が分かってきたり
その病棟で出会う人たちとの出来事が描かれている。
精神科の閉鎖病棟がテーマな時点で明るい映画でないことは予想できるが
この映画は暗いテーマに笑い要素を多く盛り込んでいて鑑賞中私も何度か笑ってしまった。が、それが逆に重いシーンとの落差を生み精神的にくる、とても重い。正直キツくて私はHPをガッツり削られてしまった。
全部見終わった後の感想は
あぁ…見応えはあったし面白かったけどなんとも嫌な感じだ、後味が悪い。もう一度観るまでには回復時間が必要だ…という感じだった
一緒に観た人(以下Aさん)は
「あーースッキリした!!ハッピーエンドだね!」
と言ったのです。
え!???どこが?なんでそう思ったの?
なぜそのような解釈の違いが生まれたのか、Aさんの意見を聞いてみると
この物語はアスカが悪いものを全て断ち切って前向きに進んで行く決意をして終わっている、だからハッピーエンドだと言う
ポイントは
・恋人との別れ
・精神病棟から退院した後、皆んなにもらった色紙やアドレスをゴミ箱に捨てている。
話を聞いているとどうもAさんの解釈の方が合っているというか、作者もそういうことを伝えたかったんだろうな、ということは分かった。
予告では最後に「ここは誰もが生まれ変われる場所」と言っているしきっとそうなんだろう。
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この映画が作られた意図とかを全て無視して私個人の視点から言わせてもらうとやっぱりどうしても前向きに捉えられない…それは私自身がメンヘラだからなのかも知れない。
アスカは今の恋人に出会う前に結婚して、離婚している。
その結婚相手はアホで面白いことが好きなアスカに反して真面目な男の人だった。
アスカは真面目な夫に対してつまらないと感じるまでに1年もかからなかった。
そして離婚してしまい、離婚後に妊娠が発覚、中絶している。
そして今度はお笑い芸人のてっちゃんに出逢い付き合うが
前の夫が自殺したことを知ってアスカは自分を責め、てっちゃんとの関係も崩れ始める
喧嘩のシーンでアスカは「うっとうしいよね…てっちゃんは面白い国の人だから…私なんか鬱陶しいよね」
と言っている。
アスカは自分よりつまらない人と付き合い、不満を感じて離婚し
自分より面白い人と付き合うと今度は自分をつまらない人間と感じてしまったし
結果的には最後に振られてしまった。
この別れの後、アスカが幸せになれる保証も未来も私には全く浮かばなかった。
じゃあアスカは一体どんな人とだったら幸せになれるの?という不安が大きく残った、
まぁ結婚が幸せの全てでは無いけどメンヘラこそ結婚しないと幸せにはなれないと思う。寂しがりやだから。
そして最後のアスカ退院のシーン
皆んなが書いてくれた色紙や似顔絵を病院を出てすぐのゴミ箱に捨てた
するとそこに救急車がやって来て病院に誰かが運ばれてくる。
それはアスカより先に閉鎖病棟から退院したくりたさんだった。
くりたさんは退院する時、皆んなにもらった連絡先帳にアスカも連絡先を書こうとした時それを止めて
「これ、どうせ捨てるから…シャバに戻るっていうことはそう言うことよ。
……でもね、あなたは別。退院したらシャンパンでもあけようよ」
そう言ってアドレスの書かれた紙をアスカに渡していた。
アスカはタクシーの窓からこの紙も捨ててこの映画は終わる。
精神病棟とのしがらみを全て断ち切ったハッピーエンドのように思われるが、
くりたさんとアスカが病院で初めて出逢ったシーンを思い出して欲しい
死ぬ気はなく事故で薬を多く飲んでしまったと言うくりたさんにアスカは
「私もそうなんです、全くそうなんです!」
と同調している。くりたさんもアスカが自分と同じマトモだけどここに来てしまった人間の仲間だと認識していた。だから連絡先を渡した。
そんなくりたさんがまた病院に戻ってきてしまったと言うことはどういうことか
”自分はマトモだ”と思っていたのは自分だけでマトモでは無かったのだ。そんなくりたさんがアスカを自分と同じだと言っていたんです。
だからこれはアスカの未来の姿だと思った。
確かにアスカは変わる決意はしたかもしれないが、人は一発ではそんなに変われない。たった一回でメンヘラは治らない
メンヘラは根が深い。
後日談として結婚して幸せに暮らしているシーンを入れない限り安心してハッピーエンドだとは思えない。
みきも、くりたさんも、アスカも、誰一人として幸せになれる確証のないまま終わっていて超共感して入りこみながら観ていた私は大きな不安感を抱いたままエンドロールを迎えてしまっていたのでした…
ねえ、……ハッピーエンドだなんて思えねえよ!!!!
鬱映画のなんとも言えない後味の悪さ……でも、それがクセになる!
観る人によって解釈が違うのって面白いですよね。見えてる世界は十人十色!